2010/10/30(土)「集中排除原則の緩和と情報の多様性」 日本マスコミュニケーション学会秋季研究発表会 倫理法制部会WSのお知らせ
2010年10月30日、東京国際大学にて日本マス・コミュニケーション学会秋季研究発表会が開催されます。倫理法制部会(部会長:林香里)は、「集中排除原則の緩和と情報の多様性―アメリカにおける放送所有規制をめぐる議論」をテーマにワークショップを開催します。以下ワークショップ概要です。
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問題提起者 山口いつ子 東京大学大学院情報学環 准教授
討論者 金山勉 立命館大学産業社会学部現代社会学科教授
司会者 林香里 東京大学大学院情報学環教授
キーワード: 放送法制、合衆国憲法第1修正、独占禁止法、新聞・放送の相互所有規制
要旨:
意見や情報の多様性を促進するために国家がメディアを規制するという試みは、憲法で保障される表現の自由の下で、いかにして許容されうるのだろうか。また、そうしたメディア規制の必要性は、メディアの形が多様化し、インターネット上での情報流通が国境を越えて広がる今日において、どのように根拠付けられるのだろうか。
これらを議論する前提としてまず想起しておかなければならないのは、例えばアメリカにおいては、メディアに関する法の伝統的な枠組みとして、「印刷(print)」・「放送(broadcasting)」・「コモンキャリッジ(common carriage)」という三つのコミュニケーション技術を柱に、規制内容を各々異にする法制度が発展を遂げてきたことである。このように、「三叉に分かれた(trifurcated)」コミュニケーション・システムに対応した制度枠組みが確立されてきた(LAURENCE H. TRIBE, AMERICAN CONSTITUTIONAL LAW §12-25, at 1003-10 (2d ed. 1988))という点は、日本でも基本的に同様である。とりわけ、ラジオやテレビといった放送メディアの領域では、周波数の有限・稀少性や特殊な社会的影響力などを根拠にして、新聞・雑誌に代表される印刷メディアに対しては憲法上許容されえない免許制や、広範な内容規制、集中排除等の構造規制などが課されてきた。
もっとも、近年では、インターネットやユビキタス・ネットワークに象徴される情報通信技術の急激な発達と普及に伴い、こうした「メディア別(medium-specific)」に組み立てられてきた従来の規制枠組みの限界が問われている。放送規制の中でも、いわゆる集中排除原則ないし所有規制については、アメリカの例をとると、1980年代以降に規制緩和が進められてきたものの、そこで注目されるのは、以前は別々に所有されていた多くのメディア手段が少数の巨大なコングロマリットによって獲得されていくにつれ、「政府は、メディアにおける多様性と競争の促進を試みるべきなのかどうか」(MARC A. FRANKLIN ET AL., MASS MEDIA LAW 201 (7th ed. 2005))をめぐって、激しく対立する政策論争が展開されてきていることである。
本ワークショップでは、最初に山口会員より放送を中心としたマス・メディアの所有規制のあり方をめぐるアメリカでのこうした議論を対象として考察を加えつつ、問題提起を行ってもらう。なかでも、言論・プレスの自由を保障する合衆国憲法第1修正と独占禁止法との関係、新聞と放送の「相互所有(cross-ownership)」に関する規制の合憲性、そして、1996年電気通信法の下での放送所有規制の緩和をめぐる近年の政策展開などについて、取り上げていく。ここでは、すぐに日米比較を論じるというよりも、そうした比較の前提として、アメリカにおける議論の構造を内在的に理解することを試みておきたい。続いて、討論者の金山会員より米国の放送界の実態を鑑みつつ、日本の現況との係累点を挙げてもらい、その後のフロアの議論へとつなげていきたい。最終的に、フロアの参加者との議論を通じて、インターネット等の発達と普及が進みつつある今日もなお、集中排除原則において希求されるべき多様性とは何か、またそのための自由と規制の適切な調整の形はどのようなものかについて、考えを深めていくことができれば幸いである。