2009/12/12(土) 選挙コミュニケーションの法と倫理  8月衆議院選挙で顕在化した諸問題

 

日本マス・コミュニケーション学会 メディア倫理・法制研究部会研究会

日    時: 2009年12月12日(土)14:30~17:40

会    場 : 青山学院大学青山キャンパス総研ビル(14号館)6階14608教室

        *正門(青山通り沿い)入ってすぐ、右側の建物。

パネリスト: 桶田 敦 氏(TBS報道局選挙本部・選挙本部長

                  吉田文和 氏(共同通信総合選挙センター・センター長)

                  大石泰彦(青山学院大学法学部・教授/メディア倫理・法制研究部会幹事)

司    会 : 本橋春紀(放送倫理・番組向上機構(BPO)・理事・事務局長/メディア倫理・法制研究部会幹事)

参加対象 : 制限なし(学会員以外の方でもどなたでもご参加いただけます)。

参加費/参加申し込み : 必要ありません。直接会場にお越しください。

お問い合わせ先 : 本橋春紀(放送倫理・番組向上機構)motohashi@bpo.gr.jp

                 林  香里(東京大学)hayashik@iii.u-tokyo.ac.jp

企画意図

2009年8月衆議院選挙。メディア各社は、これを「政権選択選挙」「マニフェスト選挙」ととらえて賑々しく伝えた。しかし、この選挙は、選挙コミュニケーション(選挙運動と選挙報道)の制度、さらにはメディアの選挙に臨む基本的な報道姿勢について、いくつかの課題をわれわれに提起するものではなかったか。現在、政権交代関連のニュースで、既に「選挙」というイッシューは過去のものとなりつつあるが、来年7月には参院選も控えている。ここで、改めて「選挙コミュニケーションの法と倫理」について考えてみる必要があろう。
本会合では、今回の選挙を振り返りつつ、主に以下の3点を中心に考えてみたい。

  1. 依然として「ネット選挙運動」が禁止されていること。同時に、旧態依然とした「政見放送」は維持されている。社会の情報化をまったく反映していない現行の公職選挙法はいつ改正されるのか。また、どう改正されるべきか。
  2. 選挙とカネの問題。各紙・各局は、巨費を投じた大政党や宗教政党の広告を流した。改めて指摘するまでもなく、公職選挙法による選挙コミュニケーション規制の最大の眼目は、財力の不均衡によって選挙が支配されないことであるはずだが、それもほとんど機能していない。こうした問題は、宗教団体に対する税制上の優遇と、それに由来する巨費の政治部門、ひいてはメディアへの流入といった制度・倫理問題にもかかわるものであろう。
  3. 新聞・テレビ各局における「出口調査にもとづく結果予測」の過熱。新聞・テレビ各局は、出口調査に大きなコストと労力をかけて、一刻も早い当落伝達にこだわっている。しかし、その趣旨は何だろうか。こういうことを「速報性のメリット」と呼ぶのだろうか。マスメディアにとって「選挙」とはそもそも何なのか。他方で、総務省によるやや神経質とも思える「慎重な当落報道」の要請がある。選挙報道規制の趣旨は選挙の公正な実施であり、投票終了後の各局の報道にお上が口を差し挟む根拠は乏しいといわざるをえない(放送法の「公平・公正」ははたして介入の根拠になりうるだろうか?)。

つまり、目下のところ、現在の日本の選挙報道は、現代の情報化・多元化社会にマッチしない古い公職選挙法に基づいた機械的な平等主義と、連日のように繰り出される世論調査と情勢報道の狭間で、政策をきちんと掘り下げるニュースの場所がますます失われていると考えられる。
選挙とは、時の権力に対する主権者の審判の場であると同時に、社会の変化と安定のバランスのためのひとつの装置である。しかし、今回の選挙で、メディアは政治の場に兆した新たな胎動を感知し、われわれに示しえたのだろうか。少数者がこの選挙において疎外されていないか、あるいは彼らがこの選挙をどう見ているか、しっかり捕捉しただろうか。いまの選挙コミュニケーションは、もしかするとわれわれの社会の改革や前進を阻害する要因にすらなっていないだろうか。では、現在の選挙法制やメディアの姿勢のどこを、どう変えればいいのか。
今回の企画は、選挙報道にかかわるメディア人とメディア制度の研究者の話を聞き、それをふまえてあるべき選挙コミュニケーションのありかたを討論し、何らかのブレークスルーを模索するものである。この問題に関心を有する研究者、実務家、大学生・院生など、幅広くご参加いただきたい。